シカの誘引狙撃 その12 狙撃場所での待ち方

狙撃場所に着いたら、まずは座って体勢を低くし、荷物をそっと置く。次に双眼鏡を取り出して、誘因場所とその周辺を観察する。林内が暗い場合は特に、シカあるいは人間がいないかどうか、注意深く探す必要がある。

危険がないことが確認出来たら、弾を装填していない状態で、銃口を誘引場所に向け、構えと照準の確認をする。着ている服によって、肩付けの感じが変わることもあるので、その日の構えを現場で確認するのがよいと思う。スコープを使っている場合は倍率を調整し、ダットサイトであれば適当な輝度の確認をしておくとよい (輝度調整機能が付いている場合)。もっとも、林内の明るさによって見やすい倍率や輝度は変わるので、射撃時に改めて調整が必要になることも多い。私はダットサイトの電池節約のため、待っている間はオフにしておき、シカが来たのを確認してからオンにしている。

構えと照準の確認ができたら、猟銃はすぐ手に取れる位置に置いておく。装填は射撃直前に行うのが安全上最もよいが、装填時の音がどうしても大きく、シカに気付かれる恐れがある、と感じるようであれば、装填した状態で銃を置いても構わないと思う。ただしその場合は、銃が滑り落ちたり倒れたりしないこと、待っている間も手に取って構える動作中も、銃口が自分や共猟者、その他の危険な方向へ向かないことを確かめなければいけない。装填した状態の銃からは、いつ弾が発射されるか分からない、という意識が必要である。私は最初のころ、弾を装填した状態で待つようにしていたが、今は弾倉だけに入れ、装填しないようにしている。

ここまでできたら、あとはジッと待つことになる。私は待っている間、録音したラジオ番組を聴いたり (電子防音イヤーマフラーに携帯音楽プレイヤーを繋ぐ)、本を読んだりして待っている。当然ながら、物音を立てないことが重要である。誘因場所にやってくるシカは、周囲を警戒しながら静かにやってくることが多いので、50m以上離れたところから、音でシカの到来に気付くということは、私の場合は経験が無い。もっともこれは下草の少ない植林地で、しかも誘引場所の近くに水の流れがある場所での話なので、ササが生い茂っていたり、周囲が特に静かな環境であれば、音でシカの接近に気付くことが可能な場合もあるかと思われる。私の場合は音で気付けるとは考えていないので、ラジオ番組を聴きながら待ち、視覚のみでシカの有無をチェックしている。

餌を使った誘引狙撃の場合、誘引場所にシカが留まっているところを撃つので、常に見張っている必要は無い。ただし、狙撃地点に着いた時点で、餌が残り少ないか全く無かった場合は、餌があるか見に来たシカがすぐ帰ってしまうことがあるので、来たらすぐ撃てる準備をした上で、常に監視しておくのが良いと思われる。

ずっと監視している場合も、双眼鏡やスポッティングスコープを覗き続けるのは、少なくとも私の集中力では無理で、目も疲れるので止めたほうがいいと思う。肉眼で見て違和感があれば双眼鏡でチェックする、違和感がなくても双眼鏡で時折見る、というのが監視の流れになる。

この際、音を出さないことはもちろんであるが、動きでシカに気づかれる可能性を下げるため、特に上半身をあまり動かさない、動かすときはゆっくりと動かすことを意識している。

当然ながら誘引場所とその付近を重点的に見張ることになるが、シカの移動ルートがある程度分かっており、狙撃地点からそのルートが見えるのであれば、そちらも見張る対象とする。

私が行っている場所の場合、冬毛のシカと林床はほぼ同じ色なので、シカが多少動いていたとしても、見つけるのは簡単ではない。しかしながら、餌に糠を使っている場合、糠は地面に比べてかなり明るい色をしているため、シカが糠に顔を近づけると、狙撃場所から見た、糠の輪郭に変化が生じることになり、肉眼でも気づきやすい。

シカの見え方は、地面や木の幹の色、その時の明るさで変わってくるため、見張りというだけでも簡単ではなく、それぞれの場所での見え方について、経験を積む必要があると思う。

最後に、飲み食いと便意の処理について。狙撃場所で待っている間も、音と匂いにある程度気をつければ、飲み食いしても問題はないと考えているので、カロリーメイトもしくはナッツバーを食べたり、500mLペットボトル入りのスポーツドリンクを飲んだりしている。気をつけないといけないのは、待っている間に飲み物を飲み干してしまわないこと。いざシカがやって来て狙撃した後、追跡や解体・埋設といった重労働をすることになる可能性があるため、その際に必要な水分を残しておく必要がある。

加えて、飲みすぎると尿意を催しやすくなるのも注意が必要だ。尿意や便意を催した際、流石に座っているその場で行いたくはない (そのための用意をすることは可能であるが)ので、少し移動して処理することになるが、銃と弾薬から目を離さないことを前提に、少し離れた場所へ慎重に移動して用を足し、同じく慎重に狙撃場所へ戻る。大便の場合は、埋める作業が必要になるが、それは待つを終了してから、帰る際に行うようにして、なるべくガサガサと音をたてないようにしている。

次回は、シカがやって来た際の狙撃について書く。

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