シカの誘引狙撃 その8 射撃練習

実際に猟銃を持って山へ行く前に、撃てばまず間違いなく当たる、という自信を持てるよう、猟銃の調整と射撃の練習をしておく必要がある。

照準の合わせ方については、他のサイトでも十分解説されているので省略する。

ここでは、目標精度を定め、それに必要な射撃姿勢と練習方法について考える。

まず、目標とすべき精度であるが、脳に当てるヘッドショットをしようとした場合、例えば北海道が出しているエゾシカ利活用のための捕獲・運搬テキストでは、「最低でも半径2.5cm以内に着弾させる技術が求められる」と書かれている。

距離50mで半径2.5cm以内に高い確率で着弾させるのは、そう簡単ではない。

銃砲店で購入した20番スラッグ実包のグルーピングテスト – ハンティングログ
に、前後依託 + MSS-20 + 25倍スコープという、かなり良い条件でスラッグ弾の集弾性を見た記録が載せられているが、20番径で6種類の弾を撃った結果、5発のうちまとまりのよい3発で求めたMean Radius (平均半径)が、0.972〜3.053cmという結果になっている。

5発中3発は高い確率と言わないので、実際の集弾性はもっと悪いことになるし、前だけの依託 or 膝撃ち、より精度の低い銃 (銃身)、アイアンサイトや倍率なしのダットサイト、と条件が悪くなれば、更に難しくなる。

50mで半径2.5cmの集弾が難しいというのは、スムースボアの散弾銃に限った話ではない。ハーフライフル+サボット弾を使っても、あるいはライフルを使っても、適切な射撃姿勢と照準が高い精度で行えないと、この集弾を実現するのは簡単ではない。

そこで私が出した結論は、スムースボアの半自動銃 + スラッグ弾 + ダットサイトで、ヘッドショットを狙うのは諦めよう。というものである。

じゃあどこを狙うかというと、胸部である。胸部の場合、心臓・肺・脊椎・肩甲骨といった、当たると長距離逃げることが困難になる部位が、シカを側面から見た場合、半径10〜15cmの範囲にあるので、ヘッドショットよりは確実に的が大きくなる

半径10cmの集弾であれば、少しの練習をすれば膝撃ちで、ある程度練習すれば立射でも、高い確率で当てられるようになるというのが、私の感覚である。この時、特別精度の高い銃や、高倍率のスコープは必要なく、平筒散弾銃 + アイアンサイトもしくはダットサイトでも十分である。

ただし、撃ったあと走られた場合に追跡が困難である環境や、肉利用のためにヘッドショットが必須、といった条件では、確実に即倒させられる頭部狙撃が求められるので、機材と練習に相当のコストをかけてでも、ヘッドショットを目指すことになるだろう。

また、胸部を狙った場合に、半径10〜15cmの集弾で急所に高確率で当てられる、というのは標準的なサイズのシカを真横から見た場合の話であって、撃ちにくい体勢の個体しか見えない、あるいは小型の個体しかいない、という場合にはより小さい集弾が求められることになるので、当たり前だが集弾が良いに越したことはない。

続いて練習方法についてだが、誘引狙撃では立射をする必要がまず無いので、膝撃ちの練習するのがよいと思われる (エゾシカ利活用のための捕獲・運搬テキストの18,19ページが参考になる)。

私の場合、誘引狙撃では基本的に倒木や立木に委託した座射をし、場合によっては膝撃ち、という感じである。膝撃ちで十分当たるようになっていれば、委託した状態の座射ではよりブレないので、自信を持って狙撃することが可能になる。

一般的には伏射の方が安定し、なおかつ低姿勢をとれるので、膝撃ちや座射より伏射をすべきではないかと思う人もいるだろうが、狙撃場所が広くて平坦であることが求められるため、環境にも依るが山中で行うには不向きなことが多いと思う。また、伏射の姿勢で長時間待っているのは辛そうだし、とっさの時に向きを変えたり立ち上がったりしにくい、という欠点もある。

練習では、ブレにくい銃の構え方、姿勢、そして引き金の引き方を習得することを目標とする。

これらは射撃場で実弾を発射せずとも、家で空撃ちをするだけで、ある程度練習になるので、射撃場に行く前、そして射撃場でも、空撃ちで練習するのが良いと思う。

もっとも、空撃ちでは安定して引き金を引けても、実弾が装填されていると意識すると、フリンチしたりガク引きしたりしてしまうのが常であるので、実弾発射時の反動を経験した上で、ブレずに撃てるようにする訓練は、射撃場で実際に実弾を撃って行うことになる。

たくさん撃つとそれだけ弾代がかかるので、私は静的射撃の練習では1回に10発、照準調整で弾数を使ってしまった場合でも20発までしか撃たない。

射撃場が空いている時に行けば、実弾を1発撃っては空撃ちを何回か行う、という繰り返しで、休憩を挟みつつゆっくり練習すると、10発撃つだけで1時間以上かけられるだろう。

具体的な構え方や姿勢、引き金の引き方については、個人差もあるので、こうすれば必ず当たるようになる、というものは無いと思う。

上手い人の射撃を観たり、その人から教わったりして、色々試しつつ、自分に合った方法を探していくのが良いと思う。

私が人から教わって実践しているものの中には、

・先台の親指が当たる位置にシールを貼っておき、毎回同じように先台を持てるようにする
・通常の呼吸の範囲で息を吐ききった時に呼吸を止め、引き金を引く
・指の第一関節と第二関節の間で引き金を引く

などがある。基本的には、なるべく毎回同じ状態で射撃するための工夫・意識である。本格的に射撃に取り組んでいる人からすれば、かなり低レベルな話であろうが、今のところ私がやっている狩猟では必要十分な技能が身についたと感じており、自信を持って銃猟に臨めている。

誘引狙撃の場合、シカを誘引するまでの労力が大きいので、1発撃って外してしまうと徒労感が激しい。誘引場所と狙撃場所が予め定まっているので、獲物が遠かったとか、撃てないところを走られたとか、そういう言い訳も出来ない。単独でやっている場合は、自分が外しても別の人が撃って止めてくれる、といったことも無い。

そういう意味で、自信を持って撃てるようにするための準備・練習をしておくことが重要になってくる。

次回は、実際に誘引狙撃をしに山へ行く際の持ち物について書く。

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