シカの誘引狙撃 その6 誘引場所と狙撃場所の整備

誘引場所と狙撃場所をある程度決め、シカの誘引が上手く行きだしたら、少しずつそれぞれの場所を整備していく作業を行う。整備の目的は主に次のようなものである。

・狙撃場所から誘引場所までの見通しの確保
・誘引場所でシカが警戒心を高めないようにする
・狙撃場所まで静かに楽に移動できるようにする
・狙撃場所や経路での倒木・落枝・落石による怪我の防止
・狙撃場所で楽に待てるようにする

まずは射線上ある邪魔な枝葉を刈り払う。誘引場所と狙撃場所を設定する段階で、ある程度は見通しの良いところを選んでいるはずなので、誘引場所と狙撃場所それぞれの周辺で少し伐れば済むだろう。狙撃場所から見てどれくらいの見通しを確保するかは難しいが、誘引された個体が立ったり座ったりするであろう範囲が全て見え、なおかつ被弾したシカが逃げた方向が分かる程度には周辺も見えるのが好ましいだろう。

見通しを良くするとシカの警戒心は上がると思われるが、適切な位置取りと十分な距離があればそう気にする必要は無いと思われる。シカの警戒心を下げる目的で、枝の張った大径木をチェーンソーで切り倒している海外の動画を見たことがあるが、流石にそんなことはできないので、やるとしてもせいぜい切り落とした枝葉を誘引場所の周囲に配置する程度だろう。これはまだ試していないが、誘引場所の周囲に水の流れがある場合は、少し手を加えて落差を作り、水の音を大きくしてやるという方法が考えられる。

狙撃場所までの道を整備することも重要で、丁寧に行っておけばそれだけ逃げられる失敗を減らせるはずである。猟銃を担いだ状態で、枝葉に引っかからず歩けるよう、刈り払いを行う。小枝や枯葉が多く落ちていて、歩いたときに音がしやすいところは、地面も整えて静かに歩けるようにする。斜面がきつくて上り降りするのが大変そうなところでは、簡易な階段を設置することもある。

山の中には、倒れてきそうな木、落ちてきそうな石など、危険なものがいっぱいある。狙撃場所へは何度も通うことになるし、そこである程度時間を過ごすので、危険木や不安定な石などがあれば、早めに処理しておくべきである。

狙撃場所では座って待つことになるだろうが、急な斜面では座ったり猟銃を置いたりすることも困難である。最初から平らな場所を狙撃場所に設定できればよいが、そうでない場合は斜面を少し削って平にしたり、杭と横木で段を作ったりできる。可能であれば少し大きめの倒木を狙撃場所の斜面下側に横にして配置してやると、足元を隠し、荷物が斜面を滑り落ちていくことを防げる。

これらの作業を行うには、手鋸、シャベル、ハンマーは最低でも必要だろう。高枝鋸もあれば便利だ。作業時の装備としては、足元はスパイクの付いた長靴か地下足袋、頭にはヘルメットを被るのが基本である。

当然ながら、植林された立木や他の有用樹種を勝手に伐倒したり損壊していけない。ただ、枯死木を切り倒したり、生木でも枝を落としたりする程度であれば、通常は問題ないだろう。これらの整備を行うことで、誘引・狙撃それぞれの成功率を高め、事故を防ぐことができると考えられる。

次回は、誘引狙撃をするための銃について書く。

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