シカの誘引狙撃 その3 誘引・狙撃場所の選定

当たり前だがまず大前提として、法律で銃猟が禁止されている場所でないこと。住宅密集地から十分に離れていること、誘引場所と狙撃場所の間あるいは周辺に、ハイキングコース等の人が通りやすい道が無いこと、などを確かめる。

バックストップを確保し、誘引されたシカから発見されにくい狙撃場所で、狙撃場所から見やすい誘引場所、という条件を満たそうと思うと、斜面の中腹から谷底に向かって撃つのが一番良いと思われるので、そのような場所を探す。

海外で盛んに行われているツリーハンティングやハイチェアハンティングから分かるように、シカは上方に対する警戒が疎かになりがちであると考えられる。もちろん、木や櫓の上と違って、斜面上部に対して全くの無警戒ということは無いだろうが、それでも反対の位置取りよりはましであると思われる。

尾根ではなく斜面中腹を狙撃場所とするのは、谷底から見て山の稜線付近で移動したり射撃動作をしたりすると、空を背にしてしまい輪郭が動いて発見されてしまうのではないかと危惧するためである。

誘引場所と狙撃場所の距離であるが、私は平筒 (スムースボア)の自動銃を使用しているので、どんなに長くても100mが急所を狙える限界で、50mくらいが現実的だろうと思う。50mというのは、多くの射撃場で設定のある距離であるし、巻狩をする人たちもこの距離で照準を合わせていることが多い。それでいて私のやっている環境では、50mも離れていればある程度の音 (遊底を静かに閉める音、など)を出しても誘引されたシカには気づかれにくい。つまり、必要十分な距離と言えるのである。もちろん、ハーフライフル銃+サボット弾の組み合わせや、ライフルが使えるというのであれば、もっと長い距離の誘引場所と狙撃場所を設定してもよいし、その方がシカに発見されるのではないかという不安が無くなり、気分的に楽になると思われる。

距離の確認方法は、ゴルフ用のレーザー距離計を持っていればそれを使うのが簡便だが、結構な値段がするので、わざわざ買うほどのものではないと思っている。私のやり方は、スマートフォンのGPSが使える地図アプリを用い、誘引場所と狙撃地点の位置情報をそれぞれ取得、そこから距離を計算するというものである。アプリ上で表示される位置情報の制度精度が概ね±5m程度なので、2点間の距離となると±10m程の誤差が生じている可能性はあるが、大体の距離が分かれば十分であるし、何度も測定する必要は無いので、これで十分である。

他に好ましい場所の条件として私が考えているのは、一つには誘引場所の近くに水が流れていることである。チョロチョロ、あるいはサラサラでもいいので、常に水の流れる音がしていると好都合である。人間の感覚がどれほどシカに通用できるかは分からないが、全くの無音よりは多少環境音があった方が、それ以外の音に気づきにくくなるのではないか、と思っている。

加えて重要だと思うのは、狙撃場所まで行くときのルートが、シカから発見されにくい地形かどうか、ということである。誘引場所と、シカがそこに向かうルートとは別の方角から狙撃場所へ行け、なおかつ誘引場所から見える範囲を長く移動せずに済むのが理想的である。この条件を満たそうと思うと、シカがどの道を通って来るのか知る必要があるので、誘引場所と狙撃場所の周辺にある獣道の把握と、次回書く自動撮影カメラを用いた観察などが必要になる。

最初から全ての条件が整った場所を見つけるのは難しいので、安全に撃てる場所を見つけたら、とりあえず餌を撒いてみるというのがいいだろう。

次回は、餌を使った誘引について書く。

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