真似してはいけない銃猟動画 その1


単独でシカのコール猟を行って成功している動画であるが、よくあるコール猟の動画とは異なり、鹿笛を吹いてから林内を歩き回っている、同個体を対象に何度も繰り返し吹いている、という特徴がある。笛を吹いた後はとにかくじっとしているべし、とか、何度も吹くと偽物だとバレる、と解説しているWEBサイトが多い中、そういった固定概念(?)を覆す内容で非常に興味深い。

動画で観る限り、猟場を良く把握し、五感を駆使し、高い集中力を持って猟をしている様子が伺える。

一方で、銃の取り扱いと射撃に関しては、真似してはいけない要素を含んでいる。

まず第一に、バックストップが無いところへ発射しているように見える。大型のシカ♂をほぼ真横から撃ち、一発で当てているので良かったが、外していれば木立の間を縫って相当な距離を弾が飛んでいく可能性があったと考えられる。このような場面での発射は避けるべきであり、自分の立ち位置から見てバックストップのあるところへシカが移動してから撃つようにするか、あらかじめバックストップを確保できる場所で待つようにすべきであったと考えられる。バックストップの確保を優先すれば、捕獲のチャンスを失する可能性ももちろんあるが、安全性を優先して自制心を働かせられるかどうかが、単独あるいは少人数での猟を安全に行えるかどうかを決定すると私は思う。

第二に、薬室に装填したまま歩き回っているように見える、というのも問題である。銃はセミオートを使っているようなのだが、装填している様子を動画内で確認することができなかった。早送りの部分もあるので断言はできないが、最初に笛を吹いた段階から撃つまで、動画内の時間で15分以上、実際の時間としては20分以上の間、常に装填状態のまま歩き回っていた可能性もある。少なくとも、一発目を撃った後で被弾したシカを追う際、この間は薬室に装填状態のまま歩いている様子が見てとれる。不当装填をなるべく避けるという心構えがあれば、薬室に装填するのはシカの接近を確認した際にするか、あるいは笛を吹く前に装填しておいて、その場から動かず待つようにするべきである。自動銃は装填時に大きな音が出るので、その音で獲物が逃げるのを嫌っているのだろうが、それならばポンプアクションかボルトアクションの銃にすればいい話である。一発目を当てた後、まだ動いている獲物に対して二発目を撃つ必要が生じる可能性は高いと思われるので、被弾したシカに接近する際に脱砲したくないのは理解できるが、ある程度の距離を移動するのであれば、暴発させる危険を避けるため、スライドを引いておくべきだったと考えられる。

以上の二点は、どちらもすぐさま所持許可取消となるような違反では無いと思われるが、重大な事故に繋がる危険性があり、初心者が真似すべき行為ではない。おそらく猟場の周辺環境が違うため、この動画の投稿者と私の意識に差が生じている思うのだが、どんな場所であっても、見えないところには人がいるかも知れない、装填状態の銃はいつ発射されてもおかしくない、という意識を持っていれば、バックストップのない方向への発射や、装填したまま歩き回る行為はできないはずである。

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